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梶田叡一 自己意識論集 全5巻

16面記事

書評

梶田 叡一 著
教育心理学の泰斗による研究の集大成

 梶田叡一博士の自己意識論集(全5巻)の第1巻『自己意識の心理学』が7月に刊行された。以後、来年3月までに、第2巻『自己意識と人間教育』、第3巻『意識としての自己』、第4巻『生き方の心理学』、第5巻『内面性の心理学』が逐次隔月に刊行される予定だ。
 著者は来年4月に傘寿を迎えるが、その算賀を前に研究同志に勧められて論集を刊行する運びになった。論集は、著者の自己意識論に関する単行本を柱としながら、最近の論文等でこれを補い、新しいまとまった形で世に問うもので、著者自身の生涯の仕事の基盤は、この5巻に集約されるといってよい。
 自己意識の問題は、アイデンティティー、自己概念、自己イメージ、自尊感情等々の形で論じられ、現代の心理学・社会学・教育学等において、最も重要な課題の一つである。個々人の言動の土台になるだけでなく、心や内面世界、生き方の問題、さらには社会や文化の組織の機能にまで関わってくる。それ故に著者は、「人間の人間たるゆえんを解明するポイントは自己意識にあり」ということができるという。
 著者は、一貫してこの領域の問題に取り組み、教育に関する諸問題にも広がり、「人間教育学」確立の大事な理論的枠組みにも自己意識の問題が大きく関わっている。まさに本論集は、教育心理学の泰斗による自己意識論の集大成ということができよう。
(各巻3300円 東京書籍)
(規)

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