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特別支援教育は幸福を追求するか 学習指導要領、資質・能力論の検討

12面記事

書評

三木 裕和 著
障害児に必要な学校教育の本質見つめ

 「コミュニケーションに困難があり、感覚過敏、こだわりがありながら、どう豊かに生きるのか。幸せな人生を送るための糧をどう体得するのか。授業の中で文化に触れ、内面化し、自己が変わっていく過程こそが学校教育」。こうした願いを持つ著者にとって、今の「特別支援教育」がどう映るか。
 第1部「特別支援教育と資質・能力論」は「PISAから眺める日本の学力」「学習指導要領改訂の行方」の2章で構成。
 OECD(経済協力開発機構)が規定するキー・コンピテンシーと、国際的潮流を反映した学習指導要領を、障害児教育が遅滞した歴史や障害のある児童・生徒に求められることに重ね合わせ「職業自立、生活自立ができない。それが教育権剥奪の理由となった。動かせない歴史的事実とあまりに符合する資質・能力論が、PISAというビッグネームとともに跋扈」する現状に「強い危機感」を表明する。同時に、増える社会適応訓練には「個人が深く考え、行動する」資質・能力論との矛盾を指摘。
 第2部は国立大学の教員となった後の教員の卵たちとの関わり、あるいは附属特別支援学校長の立場からの日々を、エッセー風の文章に収め、障害児教育の本質を見つめようとする。
 冒頭の一文は、自閉症児の学校教育の在り方について述べた部分だが、これは障害のあるなしにかかわらず、求められる”学校教育観”であるようにも思える。読者はどう受け止めるだろうか。
(1870円 クリエイツかもがわ)
(矢)

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