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アメリカの大学生が学んでいる本物の教養

16面記事

書評

斉藤 淳 著
主体的に社会と関わるために

 教養があれば、人生はもっと豊かになっていただろうと思う。「教養がある」とは膨大な知識体系を持っている人をイメージするが、現代はITで簡単に知識が得られ、すぐに陳腐化する。改めて「教養とは何か」を考えたいと、本書を手にした。
 著者はアメリカでの学生生活や教授体験を基に、日本の大学が行っている「一般教養」は「教養」ではない、「社会の一員として生きるスキル」を磨く場になっていない、だから、「本物の教養教育を日本に」との思いで執筆したという。
 教養とは、時間と空間を超えて意味を持つもの、人生哲学や守りたい価値の知的バックボーンとなるもの。社会に能動的・主体的に関わるために身に付けるものであり、知識や情報を使って自分の頭で考え、自分の意見をつくり、人と共に学ぶことが大事だとする。
 各章の副題には、

 (1) 勉強とは違う「教養人の学びの姿勢」とは
 (2) 正解がない世界を生きる「思考の方法」
 (3) 知性と仲よくなると、学びが加速する
 (4) 「よき思考」の成果を手に入れよう
 (5) 議論し、合意形成を目指すのが真の教養人

 ―と説得力のある言葉が並ぶ。読み進めていくと、新学習指導要領の目指す「主体的・対話的で深い学び」と重なってくる。自分の意見をつくる基本のトレーニング、「HOW」ではなく「WHY」を問う、「逆側から」問うてみるなど、指導のヒントも見えてくるだろう。
(990円 SBクリエイティブ)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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