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「ことばの力」を育む国語科教材開発と授業構築 変革期に問う教材と授業のかたち

12面記事

書評

李 軍 編著
古典嫌い克服、論理的思考培う

 本書は、平成30年に告示された高等学校学習指導要領を受け、その改訂の重要ポイントである「論理的思考力の育成」に焦点を当て、教材開発と授業構築に挑む意欲的な国語教師たちの実践記録である。また、もう一つの魅力は、改訂方針等を示した中央教育審議会答申で指摘された、生徒たちの「古典嫌い」を深刻な問題として受け止め、その克服に立ち向かう教師たちの真摯な姿である。
 今回の学習指導要領の改訂において顕著なのは、本書でも指摘している、「論理的」という用語の多用である。解説国語編では、旧版では全く使われていなかった「論理的に考える」という言葉が20回以上使われ、「論理的」という用語も旧版の4倍ほど使われている。
 しかし、本書が優れているのは、論理的思考力の育成に焦点を当てながらも、生徒たちの興味・関心を喚起し、楽しく力の付く授業創造のために新たな教材開発に挑戦している点である。各実践者は、「和語と漢語」(第一章)、「『古典探究』の新教材開発」(第二章)、「日本漢文の教材化」(第三章)、「古文・漢文の融合的な学びを促す教材開発」(第四章)など、まさに勇猛果敢に、しかも冷静沈着に挑む。生徒たちの「いま、ここ」を的確に把握し、最もふさわしい自主教材を開発し、独創的な授業づくりに没頭する姿は、まるで一編の推理小説を読むような、新鮮な喜びを与えてくれる。
(2200円 学文社)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)

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