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生徒指導~小学校段階での考え方~【第115回】

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授業の中で仕掛ける

 風評や噂は子どもの言葉までもとげとげしくさせる。それを自制できないと文化のレベルが試される。
 授業を参観していたとき、食の安全についての話題が出た。ある児童が「中国のは危ないよ」と、つぶやいた。これは想定内のことである。親の受け売りと分かった。そのクラスには中国籍の児童が2人いた。教師がこのつぶやきをどう扱うか注目した。

 「さて、すべてがそうかな?都合の悪いことは知らされていないとも指摘されているよね。日本の農産物も農薬などの問題で他の国は輸入をしていないこともあるそうだよ。NHKニュースでは日本の農産物は残留農薬が多すぎてEUや台湾には出荷できない、日本販売用と海外輸出用で畑を変えるとも言っていたよ」と、切り返した。教室が一瞬静まり返り、その後、一気にざわつき始めた。

 ここから教師の手腕が試される。遠くや外に見えるものから、内なるものへ足元へと学習課題を引き寄せて、調べたくなる動機を満タンにするのである。
 授業後、つぶやいた児童が中国籍の子どもへ近づき、「分かってもいないで決めつけてごめんね」と素直に謝っていた。それを見ていた周りの児童も微笑んだ。生徒指導とは授業の中にこそ豊富に仕掛けられる。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~