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生徒指導~小学校段階での考え方~【第20回】

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盗癖の背景を見極める

 毎朝、濡れたパンツをはいて髪の毛を立ててやってくるMを受け持った。濡れていたのはおねしょであるから強烈な臭いが周りに漂う。髪を保健室ですいてもらうと、毛根から抜けてくる。望まれないで産まれたことを祖母から聞かされた。私を担任に推挙した教務主任からは、あまり関わらない方がいいと何度も忠告があった。
 Mは職員更衣室で財布を盗み、車上狙いも頻繁であった。家庭訪問で実態が分かった。閉め出されて食べるものがないのである。今でいうネグレクトである。
 本気の助言はなく、相談対応も親身とは言えなかった。
 先日、千葉県野田市の10歳の子どもがひどい虐待の末に殺された。一連の経過には様々な不手際があるが、一番は最悪を想定して迅速に動く感性の鈍さを感じる。威圧する親なら通報すればいい。私はそうしてきた。
 組織と言ってもしょせんは人なのである。
 Mの親の職場には何度も通い、時にはMと食を共にして家まで送った。嘘もつかれた。お金がほしいときは、私の教卓からにするよう伝えたが、一度も手を着けなかった。やがて卒業を迎えた。今では寿司屋に勤め、目利きはピカイチらしい。見捨てないことが大切だが、他人事のように振舞った管理職の言葉に心が折れそうなときは正直何度もあった。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~