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コロナ時代に考えたい学校問題【第47回】

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「地域の方」を迎え入れるには

 先日、東京都武蔵野市の社会教育と学校教育の連携を図る懇親会で、講話をさせて頂く機会があった。以前よりこの二つを同じ土俵で考えてはいたが、教師は外へと出ないし、そうした行動が徐々に億劫になる傾向があるようだ。また、地域の方を迎え入れる姿勢が出来ている学校は少ない。
 私は新任校長として着任した翌日、教育長から「何かして欲しいことはあるか」と尋ねられので、「地域との外交、渉外、懇談の総合的な応接室にしたいので、校長室の壁紙を変えてほしい」と申し出た。
 そう決めて3年間の任を終えたときには、年に千人を越える地域の方等がお見えになっていた。のりしろは、こちらから出すのが基本である。その時に始めた「パチパチ先生」(朝自習で地域の方が、そろばんを週に2回教える取り組み)もその後、17年続いている。そうした地域の力を学校へ、学校の力を地域へと当然の事をしてきた。
 その為か、他校へ異動の時は、連合長会長の声かけで、近隣の町会長が送別会を設けてくれた。出来ることをしただけだが、町会として、地域としての長年の課題が解決されたからだろう。何事も他人事にしないと決めれば、地域のことも、家庭のことも出来る範囲で関わり、新しい道が広がるものである。
 ある市で、勢い余って、「よろず相談室」と、校長室に掲げた。やがて教委からクレームが届いた。腹のなかではやはり来たかと、笑い飛ばした。

 武蔵野市は、体験学習や子ども目線の教育を長年にわたって継続している。全国でも際立った自治体である。その意識と行動は日々確実に進化していることが分かる。そこは私の父がお世話になっていた中島飛行機武蔵野製作所の地であり、現在勤務する亜細亜大学の所在地でもある事を誇りに思う。参加された皆様の心の豊かさを感じながら、増しての報恩感謝の行動をして参りたいと腹を決めた。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題