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海のサーキュラーエコノミーから日本の未来を探究する【第2回】海洋ごみが資源に変わる仕組み~漁網リサイクルのバリューチェーン~

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 高校で進む「探究学習」は、社会と結びついた実践的な学びを重視する一方、学校だけで適切なテーマを設定する難しさが指摘されている。こうした中、日本教育新聞が探究テーマとして提案するのが、海洋環境問題を循環型ビジネスで解決する取り組みだ。そこで、本事業を推進する一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUE(AFB)の野村浩一代表理事に、環境と経済を両立させ、海の価値を次世代へ継承する新たな社会モデルとは何かについて聞いた。

海のサーキュラーエコノミーから日本の未来を探究する
~美しく恵み豊かな海を次世代に継承する、循環型ビジネスを学ぶ~
【第2回】海洋ごみが資源に変わる仕組み~漁網リサイクルのバリューチェーン~

 海洋ごみを価値ある資源へと転換する「サーキュラーエコノミー」はどのように行われているのか。ここでは、廃漁網が回収から再生、製品化、販売へと至るまでの一連の流れと、それを支える企業間連携とAFBの担う役割に焦点を当てる。

◆漁網リサイクルから商品化までの流れ

―AFBでは、廃漁網を回収し、付加価値のある製品へと再生する資源循環に取り組んでいますが、どのような工程を経て製品になるのでしょうか。

 まず漁港から廃漁網を回収し、洗浄・分別・圧縮を行います。いまは水揚げ量の多い北海道に集積拠点を置き、輸送コストの最適化を図っています。その後、樹脂ペレットという原料に加工し、糸や布へと再生します。最終的にはバッグや衣料品などの製品になります。こうした過程には回収・リサイクル・紡糸・紡績・織布・縫製・販売など多くの企業が関わり、一つでも欠けると成立しません。AFBの活動は、このプロセスに関わる多くの協働企業との連携で成り立っており、この複雑な企業間連携をつなぐハブとしての役割を担っています。
例えば、当初再生企業はアパレル等の最終製品メーカーとの接点がなく、ビジネスが成立しにくい背景がありました。AFBは、豊岡鞄やビームス、カンコー学生服など、最終製品を企画・販売する企業と連携し、「出口(販売先)」を確保することで、参加企業が継続的に関われる環境を整えています。出口があることで事業として成立し、循環が回り続けるのです。

―素材としてナイロンを中心にしている理由や、 品質と信頼性を担保するために行っていることは。

 現在は、協働企業のリファインバースや鈴木商会と共に、リサイクルの対象を主に「ナイロン」製の漁網に絞っています。これは、バージン(新品)のナイロン素材がポリエステルなどに比べて高価なため、リサイクル化による価格上昇が比較的小さく(1~2割増程度)、製品化する企業にとって経済合理性が働きやすいからです。環境性だけでなく、ビジネスとして成立することが持続性には不可欠です。
また、再生材は品質が低いというイメージがありますが、バージン材とほぼ同等の性能を確保する技術が進んでいます。また、現在は再生ナイロンにバージンナイロンを一部混合することで品質と量産性、コストの鼎立を図っています。

廃漁網を原料に作られた生地。

廃漁網など海洋プラごみを再生した商品。バックや靴、文房具など幅広いアイテムに展開している。

―企業がこのプロジェクトに参加することで得られる価値やメリットは何でしょうか。

 企業単体では進めにくいことが、協働であれば加速する。この点に尽きます。企業活動には、必ず、何らかの調達と販売があります。または前後や上流下流といった関係性ともいえます。
 その中で、廃漁網由来の素材を取り扱うというのは、どのような役割の企業にとっても、これまでになかった技術や仕組みを、自社の事業に取り入れることになります。つまり、仮にメーカーであれば、自社が素材を仕入れる先が一緒に取り組んでくれないと、いくら新しい素材が欲しくても、調達はできません。 同時に、このメーカーが頑張って作った商品も、販売してくれる企業がいなければ、事業にはなりません。
 だからこそ、我々のアライアンスに参画することで、その企業は自社の前後に位置する企業とも関係が生まれ、実践的な協働や試行錯誤が可能になるのです。
 また、我々との協働により、廃漁網など海洋プラごみの要因となる原料を活用し、各社の協働で開発された商品には、「PRODUCT for the BLUE」マークを付与しています。このマークは、海洋保全に取り組む企業であることを示す共通のシンボルであり、消費者に対して環境問題に積極的に向き合うブランドであることを分かりやすく訴求できる強力な証となります。
 さらに、商品の売上の一部は藻場再生などの海洋保全活動に寄付される仕組みになっており、企業は商品を通じて継続的に社会課題の解決に貢献できる点も大きなメリットです。
 

「PRODUCT for the BLUE」マーク

 本企画は、一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUE(AFB)と日本教育新聞が連携し、企業のサーキュラーエコノミーにおける先駆的な取り組みを中心に、本サイト内で順次ご紹介していきます。次世代を担う生徒たちの探究学習を豊かにし、持続可能な社会の実現に向けたヒントとなる情報を発信してまいります。学校現場での探究学習の題材として、ぜひ本連載をご活用ください。

一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUEとは
公益財団法人日本財団とのコラボレーションにより2020年1月に設立。恵み豊かな海を次世代に継承するために世界的に深刻化している海洋環境問題に対して、企業間で連携した対策モデルを創出する業界横断のプラットフォーム。「商品づくりを通じた海ごみ問題解決」や、その売上の一部や寄付を通じた「持続可能な藻場の再生モデルの構築」を目指し、バリューチェーンを跨る業種の異なる企業や、地方自治体、漁業関係者など約80の企業・団体と協働し、活動を推進しています。

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