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海のサーキュラーエコノミーから日本の未来を探究する【第3回】海から日本の未来を考える~高校「探究学習」への展開~

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企画特集

 高校で進む「探究学習」は、社会と結びついた実践的な学びを重視する一方、学校だけで適切なテーマを設定する難しさが指摘されている。こうした中、日本教育新聞が探究テーマとして提案するのが、海洋環境問題を循環型ビジネスで解決する取り組みだ。そこで、本事業を推進する一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUE(AFB)の野村浩一代表理事に、環境と経済を両立させ、海の価値を次世代へ継承する新たな社会モデルとは何かについて聞いた。

海のサーキュラーエコノミーから日本の未来を探究する
~美しく恵み豊かな海を次世代に継承する、循環型ビジネスを学ぶ~
【第3回】海から日本の未来を考える~高校「探究学習」への展開~

 海で生じる廃棄物を新たな資源として循環させるサーキュラーエコノミーの取り組みは、環境対策にとどまらず、地域経済の再生や国際競争力の確保にも直結する。ここでは、日本の未来を担う高校生の「探究学習」との接点を探った。

―海のサーキュラーエコノミーの取り組みが、日本の国家的課題と関係するのはなぜでしょうか。

 資源の乏しい日本にとって、国内で資源を循環させることは安全保障にも関わる問題です。これまでのように廃漁網を燃やしたり埋めたりするのではなく、新たな資源として活用することで、輸入依存を減らせます。また、沿岸地域に新たな雇用や産業を生み出す ことで環境保全と地域経済を同時に支え、持続可能な社会の実現にも貢献できます。世界的にもリサイクル材の使用義務化などが進んでおり、対応できなければ産業競争力にも影響する時代を迎える中で、サーキュラーエコノミーへの対応はますます重要なテーマになっています。

―高校における「探究学習」のテーマとしての可能性は。

 非常に高いと考えています。そもそも「海」という空間については、環境、経済、技術、国際情勢など多面的に考えることができ、生徒が自分なりの問いを立てやすいテーマだからです。そもそも、我々の生活を維持する上でのほとんどのモノは、海運によって輸入されています。だからこそ、はるか遠くの異国にある海峡や運河が閉鎖されることが、日本に暮らす我々にさまざまかつ重大な影響を及ぼすわけです。でも、まさに興味や探究心を持たないかぎり、そのような事実に気づくこともないのが実情です。
 だからこそ、「なぜ海にごみが流出するのか?」を考えるだけでも、消費行動、物流、廃棄物処理制度、漁業の実態、企業の生産活動など、社会の仕組み全体を横断的に捉える機会になります。さらに、この問題の解決策として資源循環を実現するには、技術開発だけでなく、コストや市場、法制度、地域との合意形成といった多面的な条件が関わります。
 こうした事象はまさに教科横断的であり、各教科で学ぶ知識が実社会でどのように結びつくのかを具体的に理解する契機になります。生徒は「なぜその仕組みが必要なのか」「どの主体が何を担うべきか」といった問いを立て、自分なりの解決策を構想するプロセスを経験できます。
 また、海ごみ問題を含め、海に関わるテーマは、日本の将来とも直結しています。資源の乏しい国が持続可能性を確保するにはどうすべきか、地方の産業をどう活性化するかといった、本質的でスケールの大きい問いへと発展させることが可能です。特に四方を海に囲まれている日本にとって、海は大切な資源であり、将来世代に継承していく必要があります。生徒が社会の一員としての自覚を持ち、自らの進路や職業観を考える契機にもなります。
 さらに、廃漁網が製品となり、その売上が海の再生に還元されるという循環の仕組みは、学びと行動を結びつけやすい点も特徴です。調べ学習で終わるのではなく、消費や選択、将来の職業選択といった具体的な行動に接続できるため、探究学習が目指す「社会に開かれた学び」を実現する題材として、ぜひ活用してほしいですね。

―最後に教育現場に向けてメッセージを。

 まずは先生方に、サーキュラーエコノミーを社会の根幹に関わる概念として理解してもらうことが重要だと感じています。海から多くの恩恵を受けてきた日本において、海洋ごみ問題は仕事との関わり、食生活とのつながり、環境問題への広がりなど、私たちの生活や未来と深く結びついています。若い世代がこのテーマを「自分ごと」として考えることが、持続可能な社会への大きな一歩になると信じています。

廃漁網などを再生して作られた「PRODUCT for the BLUE」商品。

まとめ

 AFBが進める海のサーキュラーエコノミーの取り組みは、世界や日本の未来に直結する重要なテーマだ。そしてこのテーマは、高校で必修化されている「総合的な探究の時間」と非常に相性が良く、学びの可能性を大きく広げてくれるものと確信する。
 その理由は、海洋環境や資源循環の課題が、生徒自身の問いを自然に引き出すテーマであるとともに、「環境教育」や「海洋教育」という枠を超えて、社会・経済・科学・技術・国際情勢など、多角的な学びへと発展させられるからだ。

◆「探究学習」の展開例としては、次のような学びが考えられる。

1.社会課題の構造を理解する学び
 「なぜ海にごみが流出するのか」「資源を循環させるにはどんな仕組みが必要か」など、課題の背景や構造を深く考えることができる。

2.ビジネスと経済の視点を育てる学び
 「なぜナイロンを再生するのか」「企業同士の連携はなぜ必要か?」「企業同士はどう連携して価値を生み出すのか」など、企業活動や経済の仕組みに目を向けるきっかけになる。

3.科学技術への興味を広げる学び
 マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの違いなど、技術的な視点から資源循環を理解することができる。

4.国際競争力の視点から考える学び
 サーキュラーエコノミーは、世界各国が競って取り組む新しい産業領域でもある。「循環型の技術やビジネスモデルを確立することが、なぜ国際競争力の向上につながるのか」
 「日本はどの分野で世界をリードできるのか」といった視点から、グローバルな産業構造や国際協力のあり方を考える学びにもつながる。

5.日本の未来を考える学び
 「資源の乏しい日本はどう生き残るべきか」「人口減少や大規模災害と資源問題はどうつながるのか」など、社会の将来像を自分ごととして考える探究へとつなげる。

 このように、AFBの取り組みは、生徒が主体的に問いを立て、多様な視点から学びを深めていくための“豊かな生きた教材”になる。海の未来を考えることは、同時に自分たちの未来を考えることでもあり、探究のテーマとして非常に大きな可能性を秘めているといえる。

 本企画は、一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUE(AFB)と日本教育新聞が連携し、企業のサーキュラーエコノミーにおける先駆的な取り組みを中心に、本サイト内で順次ご紹介していきます。次世代を担う生徒たちの探究学習を豊かにし、持続可能な社会の実現に向けたヒントとなる情報を発信してまいります。学校現場での探究学習の題材として、ぜひ本連載をご活用ください。

一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUEとは
公益財団法人日本財団とのコラボレーションにより2020年1月に設立。恵み豊かな海を次世代に継承するために世界的に深刻化している海洋環境問題に対して、企業間で連携した対策モデルを創出する業界横断のプラットフォーム。「商品づくりを通じた海ごみ問題解決」や、その売上の一部や寄付を通じた「持続可能な藻場の再生モデルの構築」を目指し、バリューチェーンを跨る業種の異なる企業や、地方自治体、漁業関係者など約80の企業・団体と協働し、活動を推進しています。

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