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知る・わかる・伝えるSDGs I 貧困・食料・健康・ジェンダー・水と衛生

14面記事

書評

阿部 治・野田 恵 編著
日本環境教育学会 監修
腑に落ち、行動につながる学びへ

 「ひとつの用水路は、百の診療所に勝る」と、アフガニスタンに多大な貢献をされた中村哲医師が、昨年末、突如殺害されたニュースが第5章に見事に重なった。こうした日本人は世界に多く存在しているが学校で学ぶ機会は少ない。グローバルとは英語を話すことではなく、どう生きるかに本質がある。
 SDGsについて、どの程度知っているかを非常勤で教えている百人ほどの大学生に聞いてみた。ほぼ全員が認識をしていなかった。さらに、その項目を読み上げて実現可能かを考えさせた。認識がはっきりと分かれた。この判断は経験や情報の違いから下されるのだろうが不安が募った。それは若者の諦め感である。第4章のジェンダー平等を実現には達成年が明示されない喫近の目標にされている。
 本書では「わかる」という言葉を「腑に落ちる」と言い換えている。「すべての人が誰一人として取り残されない」ための、地球市民としての出発点になる。日本はやはり平等発展途上国と指摘される。この取り組みが進まない理由の一つに、指導陣の説得力のなさを指摘したい。実践ではなく学問的にするために、縁遠く感じさせる。
 結論から今を考える。多方面から論じ、地球市民としての意識化の必要性を分かりやすく解説している。どの章にも実践が付けられ、自ら行動するヒントを与えてくれる。
(2200円 学文社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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