日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

GIGAスクール時代の学校家具 新JIS規格やアクティブ・ラーニングに対応した教室机・椅子

13面記事

企画特集

学校家具特集

 教室机の天板寸法は1999年の新JIS規格の改正により、幅60cm×奥行き40cmから、幅65cm×奥行き45cm以上に改善された。しかし、いまだ旧JIS規格のままの学校も多いうえ、「GIGAスクール構想」による1人1台端末導入によって、ただでさえ手狭な児童生徒の机面積がさらに窮屈になってしまう問題が表面化している。そこで、このような学校家具を取り巻く課題を検証するととともに、新しい授業スタイルに対応したこれからの望ましい学校家具のあり方について紹介する。

昭和からずっと変わらない教室の広さ
 教室の大きさは1950年に作られた「鉄筋コンクリート造り校舎の標準設計」で、奥行7m×間口9m、高さ3m(63平方m)というプランが示され、その後今日にいたるまで全国の学校で利用されてきた。しかも、小・中・高等学校まで同じスペースになっている学校が大半だ。文部科学省は「学校の補助基準面積を積算する際の一要素であり、教室の大きさを一律に決めているわけではない」としているが、かつては人口増加により急ピッチで学校施設を建設する必要があったことから、結果的に全国一律の設計が続けられてきたといえる。
 とはいえ、高度経済成長期には50人が肩を並べて学習していたことを考えると、現在は1学級30人前後となっており、余裕があるように感じられる。だが、実態はそうともいえなくなっている。
 教室を狭くしている要因の1つは、電子黒板やプリンターなど情報機器の整備が進んだことだ。今回、そこに1人1台端末が導入されたことでタブレット保管庫やロッカーの設置が必要になり、教室のスペースがさらに削られることになった。

教室机の面積も足りない
 そうした中で、児童生徒の教室机の面積が足りないという、もう1つの問題も浮上している。なぜなら、教科書やノートがB判からA判に代わり大判化されるとともに、今は副教材やワークシートなどさまざまな資料を机の上に一緒に広げて使うことも多くなっていることが挙げられる。しかも、今年度からはそこにタブレット端末が加わることになったため、日常的に使うには物理的にスペースが足りなくなっているのだ。
 したがって、従来のJIS規格の教室机を使用している学校では、より一層机の面積が手狭になったことから、机の面の縦横をそれぞれ5㎝ずつ拡大した新JIS規格(幅65cm×奥行き45cm)の教室机へと入れ替える動きが始まっている。

新JIS規格を進めた木材利用の推進
 現在、新JIS規格の教室机を導入している学校の割合は8割ほど進んでいるというデータもあるが、実数が少ないためはっきりとした数値とはいえない。その中で、新JIS規格への切り替えを押し上げた要因の1つが環境問題に配慮した木材利用の推進で、学校用家具においても地域材などを使用した木製家具の導入促進があったからだ。木製家具の導入時期が、新JIS規格への改正年(1999年)以降であったことが大きいが、広めの机に対する要求が木製家具の導入契機となっている事例も多いという。
 教室机・椅子は1960年代からスチール製が登場して、その後全国の学校に普及した。現在は上記の理由やモノを大切にする心を育てる観点から木製に戻すところも増えているが、堅牢性が落ちる、価格が割高といった課題もある。それゆえ、天板は木製(強化合板)で脚部はスチール製というデザインが今や主流になっている。木製に比べて軽量、かつ成長に合わせて高さ調節も可能などの長所があるからだ。
 また、可動式の場合、身長120cmから180cmまで1つの製品で調整できる机・椅子もあるほか、GIGAスクール構想での端末導入に伴って、プラスチック版を天板に取りつけて端末などを置くスペースを拡張できるアイデア商品も登場。加えて、新型コロナの感染予防として抗ウイルス仕様の机・椅子への注目も高まっている。

多様な学習シーンに応える学校家具も
 一方、少人数授業や多様な学習シーンに合わせて容易にレイアウト変更が可能な教室机や、特別教室や多目的スペース用のテーブル・椅子など時代に適した学校家具も次々登場している。こうした学校用家具が支持される背景には、新学習指導要領で重視されるアクティブ・ラーニング型授業など、従来の教員が一方通行で行う授業から、対話やグループ学習を中心とした双方向授業への転換が求められていることがある。とりわけ、一斉授業から抜け出せない教員にとっては、これらの自由な学習スタイルが可能になる学校用家具が指導方法を変えるきっかけになると期待されている。
 その点からも1人1台端末導入は教員の指導法を変革する機会になるだけでなく、子どもの主体的な活動を生み出す、新しい学びの場を構築するチャンスといえる。

企画特集

連載