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世界の学校給食・食育の歴史

16面記事

書評

新村 洋史 著
子どもの発達と関連付け解説

 2010年代から話題に上るようになった「子ども食堂」。今や、孤食の解決・子どもと大人たちのつながり・地域のコミュニティの連携の有効な手段として、日本各地で設置数が急増している。この子ども食堂だが、本書を読み1850年代には既にイギリスで始まっていたことを知った。
 さらにアメリカやイギリスでは、「朝食クラブ」という取り組みも行われているようで、フィンランドでは夏休み期間中には無料で食事提供する施設も設置されているそうだ。本書は学校給食制度の歴史を見つめ、世界の給食制度についても子どもの学びや発達と関係付けて解説している。子どもと「食」の関係について理解を深められる契機となる良書だ。
 子どもたちにとって、食べることは成長していく上で欠かせないものであり、まさに生きる力になり得る。日本の学校給食は、明治期に山形県鶴岡市の私立学校の「おにぎり給食」から始まったという。それは十分に食事が取れない子どもたちに対する貧困救済からだ。福祉面から始まった給食の存在が、教育としての給食へと法制度も整っていく過程がつぶさに解説されており、研究書としても充実した内容である。特にイギリスの学校給食の歩みが詳細に述べられてある点は興味深い。子どもが食に関して学ぶことの重要性に改めて気付かされる。食の営みが人間を発達させてきたという言葉に納得。
(2200円 績文堂出版)
(藤本鈴香・大谷大学教職アドバイザー)

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