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非正規教員の研究 「使い捨てられる教師たち」の知られざる実態

14面記事

書評

佐藤 明彦 著
増え続ける現状、教育への影響に警鐘

 現在、民間企業では、非正規で働く労働者が増え、正規・非正規間の待遇や賃金の格差が社会的にも大きな問題となっている。そうした状況の下で、公立の小・中・高校の教員は一体どうなっているのだろうか。統計によると、過去十数年の間に、非正規の教員が増え続け、全国的に見て公立学校の教員総数の2割近くにも達している。
 ここで言う非正規教員には、産休・育休代替教職員や時間講師、臨時的任用教職員(臨任)などが含まれている。臨任は、最長1年契約で採用される非正規教員である。小学校ではクラス担任をしたり、中学校では部活動の顧問をしたりする。教員採用試験に不合格だったが、教師としての力量も高く、教育に情熱を持っている人も少なくないという。
 非正規教員が増加する要因は、複雑に絡み合っている。義務教育費の国庫補助負担金額の2分の1から3分の1への減額。第2次ベビーブーム世代の児童・生徒数増加に対応して大量採用した教員の定年退職。子どもの個性や多様性に応じた少人数教育や特別支援教育の充実に伴う学級数の増加。地方自治体の財政事情が、非正規教員増加の背後に見え隠れしている。
 大量の非正規教員がいる状況を放置したままでは、子どもの成長・発達を支える教育の屋台骨が揺らいでいく。この実態を直視し、問題解決の糸口を探ることが求められている。
(1760円 時事通信出版局)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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